ストーリー

【コラム】新型コロナウイルスに翻弄されるオランウータン

人間の経済活動による森林破壊や、ペット目的の密猟によって数を減らし、絶滅危惧種となってしまったオランウータンは、東南アジア最大の霊長類です。

more treesでは、オランウータンなどの野生動物が棲める森をインドネシアに再生させるべく、オランウータン保護団体であるBOS財団(Borneo Orangutan Survival Foundation)と共に2016年から「オランウータンの森 再生プロジェクト」に取り組んでいます。

BOS財団が運営するリハビリセンターには、ペット目的で誘拐され、母親と離ればなれになってしまった幼いオランウータンや、森林火災により森を焼け出されてしまったオランウータンが保護され、森に還るためのトレーニングを受けています。

Photo: Borneo Orangutan Survival Foundation

これまでBOS財団では、木の登り方や餌の取り方、巣の作り方などを習得したオランウータンは、自然界にリリースしてきました。

ところが、新型コロナウイルスにより、彼らは今苦境に立たされています。
まず、本来「卒業」できたはずのオランウータンの森へのリリースがストップしています。
リリースする森は、リハビリセンターから遠く離れた奥地。
ここにスタッフが立ち入ることで、自然界に存在しないウイルスを持ち込んでしまうことを懸念しての処置です。

ちなみに、リハビリセンターでオランウータン1頭にかかる餌代などの維持費は25,000円/月。
そして卒業待機中のオランウータンは約50頭。
つまり年間1,500万円の経費が追加で発生しており、財団の財政を圧迫しています。

BOS財団では、外国人などのビジターが宿泊できるロッジも運営しています。ボクらも現地に行く際には毎回利用していて、これまで実施したツアーで日本からも多くの方が宿泊している、ホスピタリティ溢れる施設なのですが、そのロッジも2020年3月から閉鎖され、エコツアーの受け入れも依然としてストップしたままです。
ロッジの運営は、財団にとって外貨を稼ぐ貴重な収入源ですが、閉鎖によってそれも絶たれてしまっています。

さらにコロナショックによる世界的な経済の減速から、欧米をはじめとする海外からBOS財団への寄付も減っています。

こうした状況を受けて、more treesはクラウドファンディングサービス「SPIN」を通じて、コロナで苦境に立たされた孤児のオランウータン支援プロジェクトを立ち上げました。
【コロナで森に還れない孤児のオランウータンを支援】

まずはサイトを覗いていただければ嬉しいです。
ちなみに自然界に暮らすオランウータンはチンパンジーなどと違い、群れをなさず単独で行動します。つまり、ソーシャルディスタンスが保たれています。

しかし、限られた敷地の中で運営しているリハビリセンターではそうはいきません。どうしても、ある程度は「密」な状態での運営を強いられます。

リハビリ中のオランウータン Photo: Borneo Orangutan Survival Foundation

人間とオランウータンはDNAの97%が一致していると言われているので、人間からオランウータンにウイルスが感染してしまう危険性もあります。もしそのようなことが起きると、たちまちセンター内でクラスターが発生してしまうことにもなりかねないのです。

そうしたことからリハビリに従事する現地スタッフは人数が制限され、日々の体調管理や衛生状態にも細心の注意を払っています。現地スタッフの皆さんの気苦労もはかり知れません。

プランテーション開発や伐採によって熱帯雨林が減少したことで、棲み処を追われたオランウータンがいざ森に還ろうとしても今度は新型コロナウイルスによって帰還を阻まれています。

このように新型コロナウイルスは、人類はおろか、こうした動物にまで影響が出ています。インドネシア語で「森の人」を意味するオランウータン。我々の隣人であり、兄弟ともいえるオランウータンにも思いを馳せていただければ幸いです。

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水谷

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