ストーリー

コラムシリーズ「森林とカーボン・オフセット」④脱炭素社会の構築に向けた日本の動向

産業革命以降の急激な温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量の増加は、気候変動を引き起こす主な原因とされ、地球温暖化による熱波や豪雨、干ばつなどの自然災害が頻発・強大化するなどさまざまな形で私たちの生活を脅かしています。森林は気候変動問題と密接に関係し、気候変動を抑制するための大きな役割を担っています。この連載コラムでは、森林から見る脱炭素について、more treesが取り組む活動の1つであるカーボン・オフセットにまつわる情報を5回にわたり紹介します。

第四弾は脱炭素社会の構築に向けた日本の動向について解説します。
 

日本の動向

2022年6月、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)とドイツ・ベルテルスマン財団の「Sustainable Development Report(持続可能な開発報告書)」にて、各国のSDGsに対する取り組みの進捗状況や達成度が発表されました。日本は、目標4「質の高い教育をみんなに」や目標16「平和と公正をすべての人に」などが高い評価を受けた一方で、目標15「陸の豊かさも守ろう」や目標13「気候変動に具体的な対策を」は厳しい評価を受け、改善の必要性を指摘されています。目標15は過去6年間で4度、目標13においては6年連続での最低評価を受けており、早急な取り組みの改善・促進が求められています。

(出典:SUSTAINABLE DEVELOPEMENT REPORT 2022「日本のSDGs17目標別の達成度」

温室効果ガスの削減目標においては、2021年4月のアメリカが主催する気候サミットにおいて、これまでのパリ協定の目標を大きく上回る46%削減(2013年度比)を掲げました。脱炭素社会に向けて前進したことは間違いないものの、いまだに石炭火力依存から脱却する方針を示していないことや、パリ協定の1.5°C目標に整合するためには目標値が十分でないというのが現状です。
 

森林分野における動き

政府は令和3(2021)年度森林・林業基本計画の中で、国民参加型の森づくりとして2030年までに1億本の植樹を目標に掲げています。こうした動きは、木材自給率を2025年までに50%に引き上げる目標と並行して、伐採(木材の収穫)後の再造林を促進するための施策であると思われます。

(出典:令和3年度 森林・林業基本計画より一部抜粋)

 

収穫した木材は燃料として燃やしたりせずに、建築物や家具のような製品として使用することで「炭素の貯蔵庫」となります。こうした木材製品はHWP(Harvested Wood Product)と呼ばれ、製品に固定されたCO2の量を評価する動きも出てきています。加えて、国内の豊富な森林資源を活用することは、海外から輸入する場合と比較して輸送に関わるCO2排出量を削減することができます。再造林することで新たな吸収源をつくりだし、森林の循環を生み出すきっかけになります。more treesでは、こうした木材自給率の向上と再造林の動きをこれまでの森林経営を見直す良い機会と捉え、「多様性のある森づくり」の取り組みを行っています。
 

脱炭素経営に対する日本企業の意識向上

TCFDやSBT、RE100といった国際的なイニシアチブへ賛同する日本企業の数は世界でも上位を占めており、日本企業の脱炭素経営への関心の高さが見受けられます。
 

(出典:環境省・企業の脱炭素経営への取組状況

  国、そして企業が日本における課題を認識し、その課題解決に向けた意思を表明し始めています。重要なのは、その意思をどう具体的な行動に反映することができるか、という点です。日本として掲げた排出削減目標の達成、そして更なる目標の強化を推し進めるには、企業の具体的かつ効果的な取り組みが必要不可欠であると考えます。
次回のコラム第五弾では、森林を通じた脱炭素に寄与する具体的な方法を事例とともにご紹介いたします。

 
※本コラムでは、「脱炭素」に焦点を置いて解説しておりますが、森林は炭素固定機能のみならずさまざまな機能を有しています。そうした森林全体の価値に目を向けていただけますと幸いです。(森林の持つ多面的機能についてはコラムシリーズ第二弾で解説しています)

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