ストーリー

コラムシリーズ「森林とカーボン・オフセット」②プロバイダーとなった背景と目的

産業革命以降の急激な温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量の増加は、気候変動を引き起こす主な原因とされ、地球温暖化による熱波や豪雨、干ばつなどの自然災害が頻発・強大化するなどさまざまな形で私たちの生活を脅かしています。森林は気候変動問題と密接に関係し、気候変動を抑制するための大きな役割を担っています。この連載コラムでは、森林から見る脱炭素について、more treesが取り組む活動の1つであるカーボン・オフセットにまつわる情報を5回にわたり紹介します。

第二弾は森林保全団体であるmore treesがJ-クレジット・プロバイダーとなった目的と、カーボン・オフセットのステークホルダーについて解説します。
※カーボン・オフセットには海外由来のクレジットを用いるケースもありますが、今回は特にJ-クレジット(日本国内の吸収源)にフォーカスして解説します

  
J-クレジット・プロバイダーとなった背景と目的

連載第一弾において、カーボン・オフセットはCO2を価値化した「カーボンクレジット」を購入することで排出したCO2のオフセット(相殺)が実現することを説明しました。日本の場合、そのカーボンクレジットを認証しているのが国の運営するJ-クレジット制度です。more treesは、J-クレジット制度のプロバイダー(※1)として、企業と地域をマッチングする役割を担っています。

※1 クレジットの創出や活用の支援を行う事業者のこと

more treesがJ-クレジット・プロバイダーとなった背景には、

  • 補助金に依存しがちな林業経営の現状
  • 評価されるべき森林の多面的機能の存在

の2つがあります。

森林は、木材などの物質生産機能をはじめ生物多様性保全機能や水源涵養機能といった多面的機能を持っています。これまでの林業では、木材生産だけに重点が置かれていたために木材価格の変動に大きく左右されてきました。木材生産のみで儲かっていた時代もありましたが、木材価格の低迷が続く今日では国や地方自治体からの補助金でようやく経営が成り立っている状況です。


物質生産以外の機能が持つ価値はその重要性が認識されつつも、実際に貨幣価値として取引されることはほとんどありませんでした。森林の経済資源としての機能(木材や燃料など)の評価額は年間約6,700億円(※2)と試算されている一方で、環境資源としての機能の評価額は年間約70兆円(※2)と試算されています。つまり、森林の機能は、本来評価されるべき経済価値の10分の1以下しか評価されていないといえます。

※2 日本学術会議における評価額の試算
 (2001-11-01  付表 森林の多面的な機能の種類と定量評価の可否・試算例

Jクレジット・プロバイダーとなり、これまで評価されずにいた「CO2を吸収・固定する」という森林の価値を実際に経済価値(カ―ボンクレジット)として提供することは、林業において木材以外の新たな収益源を創出することになります。カーボン・オフセットの収益により、林業が補助金に頼ることなく成り立っていくとは言いませんが、これまで評価されていなかった環境資源が評価されることで、他の環境資源の価値を見直していくことに一石を投じることも期待しています。

 

地域/企業/more treesそれぞれの役割

カーボン・オフセットを行う上で関わるステークホルダーは、それぞれ重要な役割を担い、脱炭素社会に向けた好循環を生み出します。

地域(自治体や林業事業体)は、所有する森林を管理したことにより増大したCO2吸収量をJ-クレジット制度に基づいてクレジットを創出・保有する役割を担っています。クレジット販売による収益は各地域での新たな森林保全活動(間伐、林道整備、普及啓発など)に活用されます。

企業は、クレジットを購入することで自ら排出したCO2を相殺することや、購入した地域の森づくりを応援する役割を担います。森林保全や気候変動の抑制に寄与することで、企業価値を高めることができます。

more treesは、J-クレジット・プロバイダーとして地域と企業のマッチングやカーボン・オフセットに必要な手続きを代行する役割を担います。森林由来クレジットの利用を促進するとともに、クレジット売買により得た収益は新たな森林保全活動に活用されます。

SDGs目標17番目は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。地域・企業・NPO団体等それぞれでできることには限界がありますが、それぞれが持つ強みを組み合わせることでより大きな活動となります。

※本稿でいう「クレジット」は森林由来クレジットをさします

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お問い合わせ先:info@www.more-trees.org

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