コラムシリーズ「森林とカーボン・オフセット」①カーボン・オフセットとは
産業革命以降の急激な温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量の増加は、気候変動を引き起こす主な原因とされ、地球温暖化や自然災害のようなさまざまな形で私たちの生活を脅かしています。森林は気候変動問題と密接に関係し、気候変動を抑制するための大きな役割を担っています。この連載コラムでは、森林から見る脱炭素について、more treesが取り組む活動の1つであるカーボン・オフセットにまつわる情報を5回にわたり紹介します。
第一弾はカーボン・オフセットのしくみについて解説します。
カーボン・オフセットとは、「企業活動などで削減しきれず排出したCO2を別の場所での吸収/排出削減量でオフセット(相殺)すること」です。
例えば、森林は空気中の二酸化炭素を吸収・固定する機能を持っています。この機能のおかげで空気中の二酸化炭素濃度が下がるわけです。
森林が吸収した二酸化炭素を価値として捉え、その価値に見合った金額を支払い、カーボンクレジット(CO2を価値化したもの)を購入することで、排出したCO2をオフセット(相殺)したことになります。
では、「なぜ」オフセットする必要があるのでしょうか?
私たちは生活を営むうえで、さまざまな場面でCO2を排出しています。
例えば、
- 事務所や家庭での電気や水、ガスなどのエネルギー使用
- 通勤や出張、旅行などによる車や電車、飛行機の利用
- 販売する商品の原料調達、製造、輸送、廃棄
などがその一例です。
CO2をはじめとする温室効果ガス(以下CO2)は、空気中に一定量存在することで地球を適温に保ってくれていました。しかし、産業革命以降の急激なCO2排出量の増加により地球温暖化が進み、異常気象の頻発や海面上昇、感染症の増加など、私たちの生活にさまざまな悪影響をもたらすと言われています。地球温暖化を食い止めるために、私たちはまず自らのCO2排出量を削減していく必要があるのです。
「お風呂理論」は、地球の大気中にあるCO2をお風呂の水量に例える考え方です。元々バランスが取れていた風呂の水量(自然のCO2濃度)と排水量(森林、海洋などの自然の吸収量)が、蛇口から流れ込む水量(工業化などにより増加したCO2排出量)で、風呂の水があふれそうな状態になっているのが現状です。
なお、下図は2007年のデータで、現在の大気中のCO2濃度は約410ppm、人為的排出量は約91億炭素トン/年にまで増加しています。(2021年9月現在・more trees調べ)
水量のバランスを取り戻すには、緩みっぱなしの蛇口を締めること(増加するCO2排出量を削減)、減少を続ける排水量を増やすこと(自然による吸収量の増大)を同時に行うことが重要です。
また、蛇口を締める方、CO2排出量は努力次第で一定量削減することができますが、それにも限界があります。
どうしても削減できない排出分を削減する方法が「カーボン・オフセット」なのです。
排出したCO2を相殺するカーボンクレジットには、大きく分けて森林吸収系と排出削減系の2種類があります。
森林吸収系は、植林や適切な森林整備によって増大したCO2吸収量のことを指します。
一方、排出削減系は、例えば白熱電球をLED電球に変えることによって電力使用量の削減(=CO2排出量の削減)に繋がる、というように機械の更新などによって削減されたCO2の量を指します。
森林保全団体であるmore treesは、前者のクレジットを「森の恵み」の1つとして捉え、その流通の一端を担っています。
2021年8月までの約8年間でカーボン・オフセットされたクレジット総量のうち、森林吸収系が占める割合は約4.5%にとどまります。
その主な理由は、一般的に森林吸収系のクレジットは、排出削減系のクレジットと比べると価格が割高という点です。
機械を更新するだけで排出量削減につながり、クレジット化される排出削減系のクレジットとは異なり、森林吸収系のクレジットは、森林を維持、整備するために継続的な手入れや現場でのモニタリングが必要です。その結果、より多くの労力とコストがかかり、クレジットの価格にも反映されています。
一方で、
- クレジットの収益は森林保全活動に還元される
- どの地域のどの森林がCO2を吸収したのかが明確で、実際にその森林を訪れることができる
- 企業が取り組むSDGsなどの活動として、PRに活用しやすい
といったメリットもあります。
SDGsやパリ協定などを背景に世界は脱炭素社会の構築に向け、すでに動き始めています。そうした中で企業がCO2排出量に配慮した活動に取り組むことは、持続的な企業経営を行う上でもはや必要不可欠な要素です。
脱炭素社会に向けた施策の選択肢の1つとしてカーボン・オフセットを検討してみてはいかがでしょうか。
≫more treesのカーボン・オフセットの取り組みについてはこちら
お問い合わせ先:info@www.more-trees.org