ストーリー

森を想う企業をつなぐ。「more treesパートナー会」を初開催!

 


more treesが各地で進める「多様性のある森づくり」への法人参加型プログラム「企業の森」が本格的にはじまったのは2019年。おかげさまでこの5年間に25社にご参画いただき、国内外合わせて15カ所で伐採跡地への植林や手入れ不足の人工林の再生に取り組んでいます。

11月26日、株式会社メンバーズ様のご協力のもと、企業・団体のみなさまを対象に企業の森づくりに関するはじめての交流の場として「more treesパートナー会」を開催しました。「ネイチャーポジティブ」「生物多様性」といった世界的トレンドや企業の森づくりの先行事例、また企業価値を高めるアイデア等を交わし合いながら、「森づくり」「森林保全」への想いを持つ企業同士のつながりを育んだ約5時間のイベントの様子をダイジェストでお届けします。

■オープニング&イントロダクション

▲24社から40名を超える方々をお迎えしてはじまったmore trees パートナー会。会場となったのは、東京・晴海にある株式会社メンバーズ様のオフィスです。メンバーズ様には岩手県住田町で「企業の森」に取り組んでいただいており、企業同士の交流を通じてさらに森づくりを盛り上げたいとの思いから今回のパートナー会の企画や運営をサポートいただきました。

▲more trees 代表 隈研吾のメッセージが代読されました。企業の森づくりに取り組む企業をtsumikiと重ね、上下左右さまざまな方向に編むことができるtsumikiのように企業同士のしなやかなつながりから新たな社会モデルが編まれていくことへの期待が語られました。

▲「1 minute 自社紹介」と題して、参加企業のみなさまに1社1分で自社紹介をいただきました。「ただいま企業の森への参加を検討中」「つい先日、企業の森をはじめた」という方から「企業の森づくりをはじめて3年目。さらに自社の環境施策のシンボルとなるような取り組みに育てていきたい」「開始5年目で次のステップを模索中」という方まで取り組み年数も幅があり、業界・業種をみてもIT、金融、福祉、マーケティング、自動車、アパレル、コスメ、物流、公共インフラ、コンサルティング、コンサートプロモーター、旅行、建築設備などさまざま。パートナー会への参加動機としては、「今後の自社の活動のヒントをもらいたい」「最新の動向などの情報収集をしたい」「他社のみなさまから知見をいただきたい」といったお話が多く聞かれました。

▲続いてmore treesの岸より、more treesの森づくりのコンセプトである「多様性のある森づくり」についてお話したのち、「企業の森」プログラムの事例をご紹介しました。2019年、「企業の森」プログラムの最初の現場となった北海道美幌町では、20haの伐採跡地にあいおいニッセイ同和損保様と協働で植林を実施。初年度にmore trees 創立者の坂本龍一が記念植樹をしたシラカンバは、先日現地を訪問した際はすでに5mを超えていたという話など、いくつかの地域の事例をピックアップしながらお話しました。

▲お配りしたAnnual Reportで「企業の森」の情報に目を通してくださる方も。

■環境省、林野庁による基調講演

▲つづいては環境庁と林野庁のお二方の基調講演です。はじめにご登壇いただいたのは環境省 自然環境局 自然環境計画課 保全再生調整官の笹渕紘平様。「ネイチャーポジティブに向けた国の取組」というテーマで 1)「生物多様性の損失」という深刻なグローバルリスクの認知の広がりと「ネイチャーポジティブ」「30 by 30(サーティ・バイ・サーティ)」などの世界目標に関する経緯 2)自然破壊により年間44兆米ドル(世界GDPの半分)が影響を受けるという報告もあり「ネイチャーポジティブ」への対応を積極的に経営に組み込む企業が増えている昨今の動き 3)民間の取り組みによって豊かな生態系が保全されている区域を国が認定する「自然共生サイト」の制度などについてお話いただきました。

▲つづいて林野庁 森林利用課 山村振興緑化推進室 課長補佐 藤原智史様より基調講演をいただきました。1)前半は「森林・林業の現状と課題」ということで、水源涵養、災害防止、CO2吸収といった多面的機能に代表される森林の高い価値や、「伐って使って植えて育てる」循環によって営まれてきた林業の基礎知識をご説明いただくとともに、林業従事者の高齢化や担い手不足、林業全体の所得水準の低さ、木材価格の低迷、伐採後の再造林放棄地の問題などさまざまな課題が共有されました。課題がある一方、明るい話題も。CLT(Cross Laminated Timber)という新たな技術の登場により、これまでにないかたちで都市部での木材利用が広がっている事例のご紹介では、企業の木材利用の可能性を示していただきました。

2)後半は「企業の森づくりと生物多様性」に関するお話へ。生物多様性がこれほど注目される以前に、もともと日本の山村の営みはその土地土地の豊かな生物多様性を育んできた歴史があります。それを改めて森づくりに落とし込もうという考えのもと今年の3月に林野庁がまとめた「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」をご紹介いただきました。この中では生物多様性に配慮した森林施業の重要性や民間企業との連携による生物多様性保全の意義も謳われており、more treesが進める「多様性のある森づくり」「企業の森」の追い風にもなるお話でした。

■地域紹介movie

▲休憩後、「企業の森」プログラムの森づくりが進められている地域からのビデオメッセージをご覧いただきました。北海道足寄町、岩手県住田町、奈良県天川村、鳥取県智頭町、高知県梼原町の5地域から、森林組合や役場、林業事業体など、さまざまな立場で森づくりに携わっている担当者の方々の思いを聞く貴重な機会となりました。

■「企業の森」先行事例のご紹介

▲ここからは実際に「企業の森」プログラムに取り組まれている企業のみなさまによる事例紹介セッション3連打。まずは「三井住友カード×メンバーズ」の対談ということで、三井住友カード株式会社 専務取締役の佐々木丈也さん、株式会社メンバーズ 執行役員の原裕さんにご登壇いただきました。

三井住友カード株式会社様にはこれまで5つの地域(岩手県住田町長野県小諸市奈良県天川村高知県梼原町宮崎県諸塚村)で森づくりのパートナーとして協働いただいています。取り組みを進めていくなかでサステナビリティのWebサイトをリニューアルし、エンドユーザーの方にも見ていただけるような分かりやすいサイトを構築。お客様に森づくりの意義や活動を知っていただくとともに、顧客行動が社会課題の解決に貢献する仕組みづくりも行ってきました(タッチハッピー)。その過程で、マーケティングやプロモーションの専門的な知見をもとに三井住友カード様に伴走したのがメンバーズ様でした。企業の森づくりを単なる社会貢献活動として終わらせるのではなく、マーケティングに組み込み、プロモーションも連動させ、「お客様とともに社会価値を創造する」という先進的な取り組みをご紹介いただきました。

▲続いてデッカーズジャパン合同会社 Corporate PR/CR Manager 水谷美奈子さんにご登壇いただきました。2021年に奈良県天川村で「UGGの森」がスタートして今年で4年目。1年目に天川村を訪れることが決まった際は「わくわく感」からはじまり、実際に天川村で植樹体験などをしたメンバーからは「癒された」「部署やポジションを超えた交流ができた」「森づくりの必要性を理解できた」「植樹の大変さが分かった」「また行きたい」といった感想があがり、何より「天川村が大好き」という気持ちをみなさんが抱いてくださったとのこと。その後、木を植える以外の作業にも携わりたいとの思いから獣害対策ネットの設置や補植、鉢上げなども経験。さらに店長会議を天川村で実施されたり、店頭アイテムやオフィスの造作家具、配布用のノベルティなどで木材利用も進めていただくなど、幅広くお取り組みいただいています。

これほど熱心に活動を続けられている理由として水谷さんが挙げられたのは「マネジメントの参加」。トップのジェネラルマネージャーも自ら車を運転して現地ツアーに参加され、ディレクター以上もほぼ全員がツアーを経験しているからこそ、活動への理解が高まり、チームスタッフの参加にも積極的になっているそうです。今では「UGGへの森」へのツアーは問い合わせが殺到するほどプラチナチケット状態というお話も。森や地域に対する愛着やファンを生み出しながら、会社に対するスタッフのエンゲージメントも高めるためのヒントをたくさんいただいたお話でした。

▲最後のセッションでは青山商事株式会社 広報部部長の長谷部道丈さんにご登壇いただきました。2022年に高知県梼原町で「AOYAMAの森」が始動した青山商事様。最近では学生インターンシップで「AOYAMAの森」を訪れていただくなど画期的な取り組みをされていますが、さきほどのデッカーズジャパン様とは対照的に、ボトムアップで活動の実績を積み上げ、経営層の理解を得ながら活動を広げてこられたという長谷部さん。実は「企業の森」をはじめる前の2018年より、スーツの売上金の一部をmore treesにご寄付いただいていました。ただ、いったん取り組みは終了。その後、SDGsやサステナビリティという言葉が広く世間に浸透し、CSRだけではなくESGへという機運の高まりとともにご寄付を再開いただきました

さらに寄付以外の取り組みを模索していた際に他社の先進的な活動を知り「企業の森」に参画。店頭に立つスタッフがお客様に森づくりの活動を伝えられるようなメッセージを整え、木材を使ったストア什器やノベルティ制作によって店舗スタッフの環境意識に変化を起こし、経営層に対してはmore treeからの活動報告書をもとに定量的な効果を伝える。協力してくれている部署にも活動の資料を随時シェアする。そうした地道な取り組みを重ねてきたなかで、インターンシップで利用できないかという話が人材開発部からあり、「AOYAMAの森」での学生インターンシップが実現したということでした。対外的な発信だけではなく、いかに社内の人々を巻き込むか、そのためのストーリーや仕組み、座組みに落とし込めるかというたいへん実践的なお話を伺うことができました。

以上でトークセッションは終了。続けて行われた懇親会で参加者同士の交流を深め、初めての「more treesパートナー会」を終えました。

多くのみなさまにご参加いただきありがとうございました。次回開催も楽しみにお待ちください。

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