地域と地域の「つながり」の力。三重県大台町の植林技術を岩手県住田町へ。
2007年のmore trees創設から17年が経ち、森づくりを進める地域は国内外22カ所にまで増えました。さまざまな地域に足を運び、現地の方々とコミュニケーションをとってきたからこそ、ある地域の課題が実はほかの地域のアイディアや技術によって解決できる可能性が見えてくる。そんな「つながり」の持つ力をmore treesは大切にしています。2024年5月28・29日、三重県大台町と岩手県住田町をつないで行った植林の現地指導も、そうした事例のひとつです。
住田町では気仙地方森林組合が中心となって2021年から広葉樹の植林を進めています。しかし、獣害対策として設置したツリーシェルターが侵入を防ぎきれておらず、ネット自体が苗木の生長を阻害してしまっている例も多いという課題を抱えていました。一方、大台町の宮川森林組合は2000年代から広葉樹植林に取り組んでおり、地形や地質などの立地に適した樹種の選定や効果的な獣害対策など、長年にわたって積み上げてきた知見を強みとしています。
ふたつの森林組合がはじめてつながったのは、2023年8月のこと。広葉樹植林や獣害対策の手法についてオンラインで宮川森林組合の技術者にお話いただく勉強会を開きました。9か月ぶりとなる今回はオンラインではなく現場へ。宮川森林組合から2名の技術者を住田町にお招きし、気仙地方森林組合からは4名、住田町役場からも2名の担当者にご参加いただいて、対面での技術指導が実現しました。
当日はあいにくの雨でしたが、宮川森林組合のおふたりとともにふたつの植林地(箱根峠と六郎峠)を訪れました。2023年から取り入れている「巣植え」(※1)や「パッチディフェンス」(※2)の状況を確認し、「早く育つ先駆種が遅く育つ樹種の日陰になるように植える位置を決める」「ネットがたるまないように張り方を工夫する」など改善点についてアドバイスを受けた気仙地方森林組合のみなさん。貴重な機会を逃すまいと熱心に耳を傾けていました。
※1 苗木を3本一組で植える手法。苗木の上伸生長を促進できるなどのメリットがある
※2 苗木1本ごとにネットを設置するのではなく、12m四方程度の範囲をネットで囲う手法
▲苗木を植える位置についてアドバイスをしている宮川森林組合の森正裕さん
つづけて宮川森林組合の森さんから「樹種」についてのお話も。ふたつの植林地はともにカラマツの伐採跡地ですが、もともと生えていた広葉樹が一部残っています。それらの樹種を参考に、今後の植林場所や植林樹種についてのアドバイスをいただきました。
さらに、昨年植えた「イタヤカエデ」の苗木をよくよく見てみると、実は「オニイタヤ」と「アカイタヤ」というふたつの亜種だったこともわかりました。「〈種〉のレベルではおなじイタヤカエデでも、よく見れば〈亜種〉のレベルまで見分けられる」ということに驚く気仙地方森林組合のみなさんに「亜種も見分けて、3本一組で巣植えをする際はおなじ亜種同士で植えるようにしましょう」と森さんからアドバイスがありました。
ふだんは遠く離れた場所で活動しているみなさんが、住田町の森に集った2日間。実際に森を歩き、同じ景色を見ながら宮川森林組合から気仙地方森林組合へ知識や技術が手渡され、これからの植林活動につながるよい機会となりました。
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※ 本件は、独立行政法人環境再生保全機構 地球環境基金の助成(一部)を受けて実施しました