【コラム】山の誇り
昨年末、これから立ち上がろうとしている九州・新プロジェクト先の村の担当課長さんが上京したので、一緒にお酒を飲みました。
その時にその課長さんが興味深いことを言っていました。
『僕らはカーボンオフセットでお金儲けすることが最大の目的ではない。求めるのは、その土地に住み続ける「誇り」なんです』と。
カーボンオフセットへの注目が高まるにつれ、少なからず目をギラギラさせている人もいます。
こうした中、この課長さんの一言は実に含蓄があります。
もちろん、CO2吸収という森林の機能を経済的に評価し、木材収入以外の手立てをつくることで山村を活性化させるのは大切なこと。
しかしカーボンオフセットが手段でなく目的になってしまうと、持続性を欠きかねません。
さらに、ソトコト2月号
http://www.sotokoto.net/sotokoto/index.php/sotokoto-section
を読んでいたら、この話とオーバーラップする記事がありました。
明治大学農学部の小田切教授のコメント。
『(農山村の問題の)根底には、「誇りの空洞化」と呼ばれる、地域の人々のフィジカルな問題があると農学博士の小田切徳美教授は考える。』
さらに記事は続く。
『子供たちに「こんなところにいないで出て行ったほうがいい」「ここに生まれてかわいそうだ」、農山村でフィールドワークをしていると、よくそんなシーンに出会うんです。現状がつらいんだろうな、とは感じるのですが、ここを乗り越えて地域の人々自らが誇りを取り戻さなくては、新しい地域づくりは実現しません』
(月刊ソトコト2月号「エスケープルート」P.12より抜粋)
「誇り」か!いいヒントをいただきました。オフセットや間伐材で都市とつながればお互いに刺激になり、山の人が誇りを持って暮らす一助になりうるかもしれない。
そんな観点も持って都市と山をつなごう。
水谷伸吉