ストーリー

コラムシリーズ「森林とカーボン・オフセット」③脱炭素社会の構築に向けた世界の動向

産業革命以降の急激な温室効果ガス(主に二酸化炭素)排出量の増加は、気候変動を引き起こす主な原因とされ、地球温暖化による熱波や豪雨、干ばつなどの自然災害が頻発・強大化するなどさまざまな形で私たちの生活を脅かしています。森林は気候変動問題と密接に関係し、気候変動を抑制するための大きな役割を担っています。この連載コラムでは、森林から見る脱炭素について、more treesが取り組む活動の1つであるカーボン・オフセットにまつわる情報を5回にわたり紹介します。

第三弾は脱炭素社会の構築に向けた世界的な動向について、事例も交えながら解説します。
 

世界の動向

2015年、国際社会が協働して地球規模で取り組むべき目標をまとめたSDGs(持続可能な開発目標)が国連で採択されました。SDGsの1つには「気候変動に具体的な対策を」が掲げられ、気候変動対策を国の政策や戦略および計画に盛り込むことなどが求められています。
また、世界の平均気温上昇を「2度未満」、できれば「1.5度未満」に抑えることを目標に掲げたパリ協定が2020年より運用開始されました。こうした動きを背景に、世界全体で脱炭素社会に向けた動きが加速しています。

2021年10月~11月にかけてCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)がイギリス・グラスゴーで開催され、議長国であるイギリスからは、重点分野として「Coal(石炭)、Cars(自動車)、Cash(資金)、Trees(森林)」の4つが挙げられました。森林分野(特に熱帯林)においては、森林減少が気候変動の重大な原因であることが改めて認識され、主に下記4点が表明されました。

  1. 森林・土地利用に関するグラスゴー・リーダーズ宣言(グラスゴー宣言)
    2030年までに森林減少や土地劣化を食い止め好転させるとともに、世界的な森林保全とその回復を含む取り組みを強化する宣言で、140ヶ国以上が参加
     
  2. グローバル森林資金プレッジ
    2021年~2025年の森林分野の気候変動対策に合計120億ドル(約1兆4,400億円)の公的資金の確保を約束するもの(12の国と地域が資金支援を表明)
     
  3. 「コンゴ盆地森林の保護・持続可能な経営の支援に関する共同声明」
    2 の取り組みの一環で、森林減少・劣化が進むコンゴ盆地における森林保全に15億ドルの支援を約束するもの
     
  4. 「森林・農業・コモディティ貿易(FACT)対話」ロードマップ
    森林減少を伴わない持続可能な農産物サプライチェーンの構築に向け協力を進めていく方針

このように気候変動に関する国際的な会議の中でも森林分野は重要な位置づけとなっています。当然のことながら森林を有する国が自国の森林保全に向き合うことが大切でありながらも、気候変動へ多大な影響を与える森林は地球規模の共有財産ともいえるので、他国が積極的な支援を行うことも求められています。
 

各国における取り組み事例

すでに150ヶ国以上が年限付きのカーボンニュートラル目標を掲げており、各国の政府も温室効果ガス削減のための投資計画や電源構成に占める再エネの割合を引き上げる目標を打ち出しています。例えば、EUは電源構成に占める再エネの割合を2030年までに65%とする目標を掲げており、スウェーデンは2020年時点ですでに60.1%の再エネ率を達成しています。森林分野では「EU森林戦略」として、2030年までの30億本追加植樹や木材製品の長寿命利用の促進などの施策を掲げています。

また、2030年までに温室効果ガス68%削減(1990年比)という野心的な目標を掲げるイギリスは、電気自動車や洋上風力、水素などを含む脱炭素に向けた施策に対して総額120億ポンド(約1兆6,560億円)の投資計画を発表しています。
 

企業・投資家による取り組み事例

各国のカーボンニュートラル目標やそれに伴う脱炭素施策への投資は非常に重要な意味を持つ一方で、世界全体でパリ協定に整合したCO2を削減するには、政府の施策だけでは不十分であり、企業や投資家による協力が必要不可欠です。
グローバル企業のマイクロソフトは、2030年までの10年間で自社の温室効果ガス排出量と、サプライチェーンに関連する排出量を半減した上で、森林由来等の「炭素クレジット」を活用し排出量以上のCO2を取り除くカーボンネガティブを達成する計画を発表しました。マイクロソフトに限らず中長期的な削減目標と残りの削減しきれない部分をオフセットする取り組みは、多くの先進的な企業が取り入れ始めています。

また、財務情報だけでなく環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素を考慮した「ESG投資」も機関投資家を中心に広がりを見せています。実際、2020年のESG投資額は約3,500兆円で、6年間で約2倍となっています。

(出典:日本総合研究所「2020年版世界のESG投資残高統計が公表 量と質の変化に注目」

数年前までは企業にとってボランタリーな活動にすぎなかったCO2の削減等の環境への取り組みは、いまや持続的な企業経営を行う上で必要不可欠で、「生命線」ともいえる要素となりつつあります。
世界各国の政府、投資家、そして企業が同じ方向を向き、パリ協定の目標やSDGsの達成に向けて取り組んでいくことが求められています。
 
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